「歯は 出来るだけ抜かない方がいい」と言われる訳とは

もし歯がなかったら、動物は生きていけないと言われます。
動物は 前歯で獲物や草や木などを噛み切り
奥歯ですりつぶして 飲み込んでいます。

野生動物は 前歯や奥歯がなくなると
捕食や、すりつぶして飲み込めず、生命の維持が出来ないのです。

また別な視点から
医学的に見ると、歯を抜くと 歯と顎の骨の間にある クッションの役目をする歯根膜と呼ばれる組織も
なくなります。

その歯根膜組織の働きのひとつに、圧力や振動などの刺激に敏感に反応し
脳にその情報を伝える働きがあります。
薄い薄い紙切れ1枚でも 噛んですぐわかるのは
この歯根膜があるからです。

歯を抜いて この歯根膜の働きがなくなると 噛んだという刺激が脳に伝わらなくなります。
この事が長期間続くと 脳が刺激を受けなくなり
脳の廃用性萎縮を起こし、退化していくそうです。

またその一方で
歯を抜いても ぴったり合った義歯(入れ歯)でいつも噛むようにしていると
歯根膜が無くても脳が刺激され、しっかり歩けたり、笑ったり、快適な生活が送れるようになることも
実証報告されています。
どちらも医学的に正しいと思われます。

有名な上野動物園での話(岡山大学 渡辺先生による)で、
一文字 という馬が歯周病で歯を抜いて、歯型を取って入れ歯をつくりました。
そして 入れ歯を入れると 一文字は良く噛めるようになって元気を取り戻した という話ですが…。
その話は少し怪しいらしいのです。
一文字の上顎をタオルで縛っている写真があったそうです。
人間の入れ歯でも難しいのですが、馬ともなると はずれ落ちやすくなったり、歯茎にあたって 痛くて
吐き出そうとしているのを、無理にタオルで縛って固定していたのでは…という話でした。

なんともかわいそうな話ですね。
動物にとって 歯を抜くことがどれだけ大変な事なのか と思います。
ぴったり合った入れ歯を作ることは人間でも個人差もあり 結構難しいものです。

毎日川柳に
「義歯はずし、 豆腐の味を かみしめる」  とありました。

入れ歯は、板の上に食べ物をのせて 砕いて食べるようなものです。
お豆腐のような食感は 入れ歯では とうてい味わえないのです

いろいろ考えると
できることなら歯は抜かない  方がより豊かな生活が出来るのではないかといつも思っています。

そして いつも抜かなくていい方法はないかと考えながら 毎日の診療を行なっています